募金に関して
2011年05月08日 08:40
作者:夏風もけ
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心うたれた神さま

やさしい心があれば、どんなことでも乗り越えられると、信じています。


 とある神さまが、日本の東北地方へとやってきました。
 その神さまは、人間を観察して助けるのがお仕事です。日本じゅうをまわって、まじめにがんばっている人の願いをかなえたり、悪いことをした人をこらしめたりしています。
 けれども、最近、神さまは人間がきらいになってきています。なぜなら、神さまはとてもがんばっているのに、うまくいかないからです。
 神さまは今日もまた雲の上から人間たちをながめながら、友達のお日様にむかってつぶやきます。
「ああ、いやになる。わたしはとてもがんばっているのに、人間はちっとも悪いことをやめない。おとなりの人を信じないで、争いばかりしている。しかも、なにか悪いことがおこると、決まってわたしのせいにされるんだ。ああ、人間はなんてわがままで、みにくい生き物なんだろう」
 お日さまも、神さまの言葉にうんうんとうなずいてこう言いました。
「そうだね。ぼくも毎日空の上から人間を見ているけれど、ぼくの悪口ばっかり言うんだ。まったく、人間たちの心はなんてまっ黒なんだろう」
 神さまとお日さまは、二人でため息をつきます。
 そのとき、雲の下で、人間たちの住んでいる地面が、急にぐらぐらとゆれ始めました。神さまとお日さまは雲の上にいるのでなんともありませんが、地上では人間たちがあわてて家からとび出してきました。
 それを見た神さまが、おどろきながら言いました。
「地しんだ! これは、大きいね。わたしが見たことのあるものでも、一番かもしれないな」
 お日さまは、海の向こうを指さしながら、目をぱちくりとさせます。
「神さま、見てごらん! 向こうから、つなみが、やってくる!」
「ほ、ほんとうだ!」
 雲の下では、つなみが家や車をのみこんでいきました。
 神さまは、ぼう然とながめて、そしてまたため息をつきました。
「ああ、これでまた人間たちは感謝の心を忘れて、悪口を言いあって、争いはじめるんだろうな」
 お日さまもうんうんとうなずいてから、
「そうだね。まったく、人間はいつもそうだ。わけがわからないよね。さて、ぼくはもう行くよ。神さまは、これからいそがしくなりそうだね」
 神さまはお日さまに手をふりながら答えます。
「ああ、人間たちは自分かってだからね。人間たちの手助けが、しばらく終わりそうにないよ。じゃあ、またね」
 こうして二人は別れて、神さまは地上に向かってとんでいきました。

 まず神さまは、逃げられずに困っている人たちを助けることにしました。
「人間は、自分のことばかり考える。だから、だれも困っている人たちを助けたりしないだろう。ああ、またわたしの仕事が増えるなぁ」
 そう言って、神さまは一人で逃げ遅れた人たちを探しました。
 ところが、神さまの想像とは反対に、人々は、たがいに手を取り合って、励ましあってひなんをしていました。
 うまく歩けない人たちには、元気な人が肩を貸していました。高い場所は争うことなくみんながゆずり合っていました。助けられた人々は、助けてくれた人に感謝して、命が助かったことを喜んでいました。
 なので、神さまが手伝うことはほとんどなく、神さまはびっくりしていました。

 次に神さまは、物が足りずに困っている人たちを助けることにしました。
「人間は、自分の持ち物をぜんぜん手放さない。だから、だれも困っている人たちのために、自分の持ち物を分けたりしないだろう。ああ、またわたしの仕事がふえるなぁ」
 そう言って、神さまは物が足りない人たちを探しました。
 ところが、また、神さまの想像とは反対に、物が足りない人たちのところには、日本中から、そして世界中から物が運ばれてきました。
 最初は水や食事、そしてだんだんといろいろな物が次々に運ばれてきました。物が届くと、人々は届けてくれた人々や送ってくれた人々に感謝して、ありがたく思いながら使っていました。
 なので、神さまはまた手伝うことが少なく、神さまはびっくりしていました。

 次に神さまは、人手が足りなくて困っている人たちを助けることにしました。
「人間は、自分が幸せなら他の人が不幸でも気にしない。だから、だれも困っている人たちを助けにきたりしないだろう。ああ、またわたしの仕事がふえるなぁ」
 ところが、今度もまた、神様の想像とは反対に、地しんやつなみの被害にあった場所には、多くの人々がボランティアでかけつけていました。
 がれきを片付けたり、ご飯を作ったり、子どもたちのために勉強を教えたりと、ボランティアの人たちは協力し合って、いろいろなところでいろいろな仕事をしていました。支援を受けた人たちは、ボランティアの人たちに心から感謝し、だんだんと笑顔も戻ってきていました。
 なので、神さまはこんども手伝うことが少なく、神さまはびっくりしていました。

 ぼろぼろになってしまった町をまわりながら、神さまはおどろいてばかりでした。
 どこへ行っても、人々は助け合い、励ましあっていました。いろいろな物が世界中から運ばれ、多くの人が助けにやって来ていました。その姿は、今まで神さまが思っていた人間とはまったくちがっていました。
 神さまは、ゆっくり考え直しました。
「わたしは、人間をかんちがいしていたようだ。人間は、やさしい心を持っている。けんかや争いをしてしまうこともあるけれど、それ以上に他の人を思いやれるんだ。ならわたしは、そのやさしい心の手助けをしてあげなくてはいけないな」
 そう思うと、神様はまた人間の手助けに戻っていきました。

 やがて、いくつかの季節が過ぎました。
 今日も神さまは、雲の上から人間たちを観察して、手助けをしています。
 そこへお日さまがやってきました。
「やあ、神さま。人間たちは、どうだい?」
 神さまは、にっこりと笑ってお日さまに答えます。
「ああ、お日さまかい。見てごらんよ。たまにけんかとかはしているけれど、それ以上にみんな、助け合って、がんばっているよ」
 神さまが指さす先には、きれいに建て直された町なみが広がっています。
 そして、そこに住む人たちの顔は、みんな明るい笑顔でかがやいていました。

 Fin.